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(完全版)中小企業におけるM&Aとは!?M&Aの定義、手法の違い、手順、事例を専門家が徹底解説

事業承継の選択肢として、M&A(企業の合併・買収)は、どのように活用出来るでしょうか?
この記事では、中小企業の事業承継問題を解決し、持続的な成長を実現するためのM&Aの概要やメリット・デメリット、過去の事例について解説します。

 

1.はじめに

中小企業M&Aの重要性

後継者不足が深刻化する中で、中小企業が持続的に成長し続けるためには、M&A(企業の合併・買収)が重要な手段となってきています。買い手にとっても、M&Aの活用により、新事業や技術取得、人材確保等、様々なメリットを得ることが出来ます。

 

日本における中小企業M&Aの現状

日本における中小企業M&Aの件数は増加傾向にあり、事業承継等を理由にM&Aを積極的に活用する傾向にあります。

参考:令和4年度中小企業庁事業承継ガイドライン – 事業承継・引継ぎ支援センターの支援実績

 

M&Aとは

M&Aとは、Merger(合併)とAcquisition(買収)の略語です。定義としては、企業が他の企業を統合・買収することを指します。これにより、買い手は、企業の経営戦略に沿った施策の一つとして、競争力を強化し、市場シェアを拡大すること等を狙います。一方、売り手は、近年では事業承継、エグジット、更なる会社の発展等、広い目的でM&Aを活用します。

 

2.M&Aとは何か(詳細)

狭義の定義

吸収合併・新設合併等の企業の「合併」と、株式譲渡、事業譲渡、会社分割等の会社・事業の「買収」を指します。

 

広義の定義

上記に加えて資本参画、合弁会社設立等を含んだ企業の経営戦略の実行を指す場合もあります。

 

参考:友好的買収と敵対的買収

  • 友好的買収:対象企業の合意を得て行われる買収です。
  • 敵対的買収:対象企業の同意を得ずに行われる買収です。

 

中小企業M&Aの場合は、株式譲渡による友好的なM&Aが一般的です。次に、複数あるM&Aの種類について解説します。

 

3.主なM&Aの種類

①株式譲渡

株式譲渡は、株主が株式を他の企業や個人に売却することです。

【株式譲渡の特徴】

  • 引き継ぎが比較的容易
    既存の契約や取引関係が継続可能
  • スピーディーに承継できる
    事業譲渡や合併等に比較し、手続き面が簡易的
  • 安定したスキーム
    過去事例や判例も多いので、安定した手法といえる
  • 簿外負債など全てを引き受ける可能性
    企業の簿外負債や法的リスクも引き受けるため、買い手にとっては慎重な検討が必要

 

②事業譲渡

事業譲渡は、一部または全ての「事業」を売却することを指します。特定の事業部門や資産を切り離して売却する際に活用されることが多いです。

【事業譲渡の特徴】

  • 事業の一部を承継可能
    買い手は必要な事業(資産・負債)のみを取得出来る、
    売り手は経営資源を集中出来る
  • 手続きに時間がかかる
    基本的に全ての契約の再締結、資産の売買が必要となる
  • 費用負担
    法人間の資産と負債の売買となり、法人税や事業税、登録免許税等の費用が発生する場合がある
  • 従業員・取引先の離反リスクがある
    従業員や顧客が必ず引き継がれるとは限らない
  • 税務メリット
    のれん分は営業権としてM&A後に償却できる場合がある

③合併

合併は、二つ以上の企業が一つの企業に統合されることを指します。一方の会社の権利義務の全部を存続する会社が吸収して承継させる「吸収合併」と、新規に会社を設立し、双方の会社の合併対象会社の全ての権利義務を承継させる「新設合併」があります。グループ再編や同業内での規模拡大を狙った戦略として活用されます。

【合併の特徴】

  • 対価として株式交付等も認められ大規模な資金調達を行うことなく実施も出来る
  • のれん分は営業権としてM&A後に償却できる場合がある
  • 他のスキームに比べ手続きの負担が大きい
  • 不要な簿外負債、資産も引き継の対象となる場合がある

④株式交換

株式交換は、一方の企業が他方の企業の全ての株式を取得し、その代わりに自社の株式を発行することを指します。企業の子会社化を目的とする場合等に用いられます。

【株式交換の特徴】

  • 現金のやり取りがないため、資金繰りに影響を与えにくい
  • 株式交換後もグループの経営参画意識が高まる
  • 株主構成の変化により、経営権が影響を受けることがある
  • 株式の現金化に時間がかかる場合がある
  • 当該株価の変動によるリスクがある

 

中小企業では主に①株式譲渡が活用されます。その理由は、手続きが比較的簡単であり、既存の契約や許認可を引き継ぐことが出来るためです。

また、迅速な実行が可能な点も中小企業にとって大きなメリットとなります。一方、1つの事業部を取得する場合、簿外負債が予期される場合等は、事業譲渡が活用されるケースもあり、スキームについては専門家に相談することをおすすめします。

 

4.M&Aのメリットとデメリット

ここでは、M&Aのメリットとデメリットについて解説します。

買い手側のメリット

  • 人材や技術、ノウハウ等の経営資源を取得し、自社の成長を加速出来る
  • 迅速に新市場に参入出来る
  • 経営統合による商圏や商材拡大、また共通コスト削減によるシナジー効果が期待出来る

 

買い手側のデメリット

  • 重大なリスクや簿外負債まで引き継いでしまう可能性がある
  • 投資対効果がでない可能性がある
  • M&A及び経営人材の確保が困難

売り手側のメリット

  • 基本的に従業員の雇用継続が可能
  • 引退資金等の確保が出来る
  • 金融機関からの借入に伴う個人保証や担保を解除することが可能

 

売り手側のデメリット

  • 自社ブランドや屋号、経営方針が変更されることがある
  • 従業員の離職やモチベーション低下のリスクがある
  • M&A後も補償や競業避止義務等、義務が残ることがある

 

続いて、中小企業M&Aのプロセスを解説します。

5.中小企業におけるM&Aの流れ

①準備段階

(1)経営状況と経営課題の把握

経営状況や経営課題、経営資源等を見える化し、現状を正確に把握します。

(1)後継者候補の有無の把握

また後継者候補の有無と意思の確認を行います。

②M&Aの行程の実施段階

(1)仲介業者、FAの選定

マッチング等について、支援機関である仲介者(譲渡側・譲受側の双方と契約を締結する。)・ FA(フィナンシャル・アドバイザー。譲渡側又は譲受側の一方とのみ契約を締結する。)を選定します。

(2)企業価値の評価

適正な企業価値を把握するための評価方法として、適切な手法により企業価値を試算します。

(3)事業インタビュー、概要書の作成

M&Aプロセスの初期段階では、売り手企業の事業内容を詳細に理解するために事業インタビューを行います。これに基づいて、企業概要書を作成します。企業概要書には、ビジネスモデル、財務状況、成長見込み、主要なリスク等が記載されます。買い手が初期評価を行うための重要な資料となります。

(4)マッチング

買い手と売り手のマッチングにあたり、M&Aアドバイザーや専門プラットフォームの意見を参考にしながら、最適な相手先を見つけます。

(5)交渉

マッチング後の経営者同士の面談(トップ面談)は、経営理念・企業文化や人間性等を直接確認するための場であり、その後の円滑な交渉のためにも重要な機会となります。

(6)デューデリジェンス(DD)

企業調査(DD)を行い、財務状況や法的リスク、経営体制や事業内容等を詳細に把握します。

(7)最終契約の締結

DDで発見された課題等について再交渉を行ったうえで、最終契約書には取引条件や責任分担、違約時の対応等を明記し、双方が署名します。

(8)クロージング

株式や事業の譲渡、譲渡代金の支払い等を行います。

(9)PMI(Post-Merger Integration)

買収後、統合プロセスを計画的に進めることで、シナジー効果を最大限に引き出すことが可能です。

 

6.事例紹介

ここでは、中小企業M&Aの成功事例と失敗事例を紹介します。

 

成功事例

譲渡側:温泉旅館「桐のかほり咲楽」

譲受側:小野写真館グループ

売り手の温泉旅館「桐のかほり咲楽」は、後継者不在のため事業承継目的のM&Aを検討していました。一方で、買い手の小野写真館グループは新型コロナウイルスの影響もあり会社のポートフォリオを見直し、業種を超えた売上拡大のための売上拡大を考えていました。

本M&A成立後、小野写真館グループは「桐のかほり咲楽」にて旅館貸し切りウェディングや周辺の自然を活かしたフォトウェディング、還暦や喜寿、七五三の家族のお祝いごとのプランを展開しています

参照元:小野写真館グループ「2. シナジー効果[咲楽編]

 

失敗事例

譲り渡し側:C社(建設業)

C社代表者は70歳で、後継者候補もいないものの、多忙な毎日に追われ、事業承継を考える暇がありませんでした。金融機関から約2億円の借入を行い、なんとか事業を継続している状況でした。

資金繰りが悪化する中で、A社が譲り受け側(スポンサー)を探す時間的な余裕はほとんど残されておらず、また、弁護士が紹介したM&A専門業者が懸命にスポンサー探索を行った結果、スポンサー候補が複数社関心を示したものの、活気を失ったA社の事業を譲り受ける決意をしたスポンサーは現れませんでした。

最終的にC社は資金繰り悪化に耐えきれず破産し、廃業してしまいました。また、金融機関からの借入について個人保証(経営者保証)していたA社代表者も、同時に破産することになってしまいました。

参照元:経済産業省「中小M&Aの事例

 

7.まとめ

中小企業M&Aの今後の展望

中小企業M&Aは少子高齢化に伴う後継者不足問題を背景に今後も増加傾向が続くと予測されており、また、多くの中小企業に新たな成長機会を提供する重要な手段になると期待されます。

M&Aを成功させるには

中小企業がM&Aを成功させるためには、適切なアドバイザーの選定が不可欠です。弊社は、事前の「業界と事業の精査及び可視化(ビジネスDD)」並びに「承継計画」の有無で成約率が大きく変わると考えております。アドバイザーに頼みたいけど、成果が見込めないのは怖い、不透明な料金設計は怖いといったお悩みがございましたら、Icon Capitalで無料相談を実施させていただきます。

 

8.事業承継の相談先

事業承継の課題を抱える経営者の方は、ぜひ一度、IconCapitalへご相談下さい。Icon Capitalは、経験豊富なアドバイザーがパートナーとなって事業承継に対して助言・投資を行う会社です。

Icon Capitalは第三者を譲渡先とするM&Aだけではなく、一度弊社が経営者から株式を譲り受けさせていただき、その後、長期間に渡り従業員に株式を付与していく「従業員承継投資」等も行っております。積極的に事業承継を検討している経営者様だけでなく、まだ承継の意思が固まっていない方や、赤字だけれど承継は可能なのか知りたい方等、幅広い相談を受け付けています。

無料相談は随時受け付けていますので、お気軽に電話またはメールでお問い合わせ下さい。

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