親族内承継において、株式は「贈与」「譲渡」「相続」という3つの方法で事業承継されます。本記事では、これらの税金等のコストについて解説します。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、税務に関する詳細な計算や判断は専門家の助言を必要とします。具体的な税務処理や法律に関する問題については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。
目次 / contents
相続税は、オーナー経営者が亡くなった際に、その財産を親族が受け継ぐ際に課される税金です。相続税の計算は、以下のステップで行われます。※あくまで簡便化した計算イメージです。
まず、被相続人が保有する財産のうち、課税対象資産(預貯金、有価証券、自社株式、不動産等)の相続税評価額を集計します。
次に、相続税の額を計算します。この計算は法定相続割合で計算します。仮に相続税評価額が1億円、相続人が妻、長男、長女の3人の場合、以下のような計算を行います。
①基礎控除額の計算
3,000万円+600万円×法定相続人の数(3人)
②相続税の課税価額
1億円-4,800万円=5,200万円
③相続人各人別の課税価格の計算
妻分の課税価格:5,200万円×法定相続割合1/2=2,600万円
長男の課税価格:5,200万円×法定相続割合1/4=1,300万円
長女の課税価格:5,200万円×法定相続割合1/4=1,300万円
④相続税額の計算
妻分の相続税:2,600万円×相続税率15%-50万円=340万円
長男の相続税:1,300万円×相続税率15%-50万円=145万円
長女の相続税:1,300万円×相続税率15%-50万円=145万円
上記の計算により、相続税の総額は630万円ということになります。相続税の税率については以下の表を参考にしてください。
贈与税は、生前に財産を贈与する際に課される税金です。贈与税の計算(暦年課税)は、以下のステップで行われます。
Step1:1年間に贈与された財産の額を合計
Step2:基礎控除額110万円を差し引き課税価格を算出
Step3:課税価格に税率を乗じて贈与税を算出
贈与税の税率については以下の表を参考にして下さい。
*暦年課税の場合において、父母や祖父母等の直系尊属からの贈与により財産を取得した受贈者(財産の贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者に限ります。)については、「特例税率」を適用して税額を計算します。この特例税率の適用がある財産のことを「特例贈与財産」といいます。また、特例贈与財産に該当しない「一般贈与財産」については「一般税率」を適用して税額を計算します。
不動産を取得する際には、登録免許税や不動産取得税が発生します。
登録免許税:土地や建物の登記時にかかる税金。固定資産税評価額の0.4%。
不動産取得税:土地や建物を取得した際にかかる税金。固定資産税評価額の4%。
事業用資産の場合、軽減措置や特例が適用される場合もあります。不動産を含む資産の承継には、これらの税金も考慮する必要があります。
親族内承継において、法務手続きや契約書作成、トラブルの解決には弁護士のサポートが必要です。弁護士費用は、依頼内容や案件の複雑さによって異なりますが、一般的には数十万円から数百万円程度の費用がかかります。
親族内承継に伴う税務相談や申告手続きには、税理士や会計士のサポートが必要です。税理士や会計士の報酬は、業務内容や依頼範囲によって異なりますが、一般的には数十万円から数百万円程度の費用がかかります。また、財務評価や各種申請手続きのサポートにも費用が発生します。
相続時精算課税制度は、特別控除となる2,500万円までの贈与額が非課税となる制度です。2024年1月から年110万円までの基礎控除が認められました。一方、特別控除を超える部分に対して一律20%の贈与税が課されます。
一方、その贈与者が亡くなり相続が発生した際に、相続財産に生前贈与を受けた財産分を合算した額に相続税が課される制度となっている点は留意が必要です。
※この制度を利用するためには、贈与者が60歳以上であり、受贈者が18歳以上の親族であることが条件です。
事業承継税制は、一定の条件を満たす事業承継に対して、相続税や贈与税の納税猶予や免除を受けられる制度です。この制度を活用することで、事業承継時の税負担を大幅に軽減することが可能です。主な適用条件としては、後継者が5年以上事業を継続することや、株式の一部を売却しないこと等があります。手続きには、事前の計画書の作成や、都道府県知事の認定を受ける必要があります。
親族内承継にかかる各種費用を把握し、適切に対応することは、スムーズな事業承継を実現するために重要です。税務に関する詳細な計算や判断は専門家の助言を必要とするため、具体的な税務処理や法律に関する問題については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。早期の準備と計画を立て、家族間の協力と外部専門家の力を借りて、成功する親族内承継を目指しましょう。
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