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事業承継

中小企業M&Aにおけるデューデリジェンスについて専門家が解説

M&A(企業の合併・買収)は、企業の成長戦略や事業承継の手段として重要な役割を果たしています。その中でも、デューデリジェンスはM&Aの成功の鍵を握るプロセスの一つです。この記事では、中小企業M&Aにおいてデューデリジェンスがどのように進められるのか、その具体的な進め方と注意点について解説します。

M&Aの全体的な流れや手順についてはこちらの記事をご覧ください。

1. デューデリジェンスとは

① デューデリジェンスとは

デューデリジェンスとは、買収や合併の際に、対象となる企業の財務状況や法務リスク、ビジネスの健全性を調査・確認するプロセスを指します。このプロセスを通じて、買い手企業は潜在的なリスクを評価し、取引条件の見直しや意思決定を行います。

② デューデリジェンスの調査範囲

デューデリジェンスの調査範囲は、財務状況、法務問題、ビジネスモデル、税務リスク、環境・労務問題などです。買い手は適切な調査範囲を設定することで、買収後のリスクを最小限に抑えることができます。

2. デューデリジェンスの実施タイミング

① 実施タイミング

デューデリジェンスは、M&Aプロセスの中でトップ面談が行われ、双方が具体的な交渉を進める意思を確認し、基本合意書(MOU)を締結した後に行われるのが一般的です。

② デューデリジェンスに要する期間

デューデリジェンスに要する期間は、企業の規模や業種、調査範囲によって異なりますが、一般的には数週間から数ヶ月程度です。中小企業の場合、通常は1〜2ヶ月程度が目安となりますが、事前の準備や対象企業の状況によってより上記よりスムーズに進行する場合もあります。

3. デューデリジェンスの種類

① 財務、税務デューデリジェンス

財務デューデリジェンスでは、対象企業の財務諸表や資金繰り、負債の状況を精査します。税務デューデリジェンスでは、過去の税務申告や未払いの税金などを確認し、税務リスクの有無を調査します。

② 法務デューデリジェンス

法務デューデリジェンスでは、契約書や訴訟リスク、知的財産権などの法的な側面を精査します。契約内容や許認可の状況を確認し、法務リスクを特定します。

③ ビジネスデューデリジェンス

ビジネスデューデリジェンスでは、対象企業のビジネスモデルや市場ポジション、競合分析、顧客ベースなどを調査し、ビジネスリスクや成長ポテンシャルを評価します。

④ その他

上記の他にも、人事・労務デューデリジェンスや環境デューデリジェンス、ITデューデリジェンスなど、企業特有のリスクに対応した調査が行われることがあります。

4. デューデリジェンスの費用

中小企業のデューデリジェンスにかかる費用は、企業や事業の規模、調査内容、依頼する専門家の数により変動します。また、依頼する企業側の予算や要件も影響します。例えば、上場企業が依頼する場合、多面的な調査が求められ、大手の監査法人や法律事務所に依頼することが一般的で、費用が数百万円~数千万円程度と高額になる傾向があります。中小企業の場合、デューデリジェンス費用はおおむね数十万円から数百万円が相場とされていますが、具体的な金額は調査スコープによって異なります。

5. デューデリジェンスの手順

① 調査チーム編成・調査準備

デューデリジェンスの第一歩は、専門家チームの編成と調査計画の策定です。財務・税務、法務等の専門家が参加し、調査の方向性を定めます。

② 資料の分析・インタビューの実施

次に、提供された資料の分析と、対象企業の経営陣や従業員へのインタビューを行います。これにより、企業の内部事情や将来的なリスクを把握します。

③ 調査結果の検討

調査結果は、買収企業の経営陣に報告され、リスク評価やM&A条件の再検討が行われます。この段階で、取引を進めるかどうかの最終判断が下されます。また、重要な問題が判明した場合、譲渡価格の交渉が行われる場合もあります。

6. デューデリジェンスで注意すべきポイント

① 規模と内容に応じた調査の実施

中小企業M&Aにおいては、対象企業の状況や業界特性、ビジネスモデルに合わせて調査項目を絞り込むことで、より現実的で有用な結果を得ることができます。ただし、コスト削減や時間短縮を優先して必要な調査を省略したり、自社内の担当者のみで完結させたりすることで、重大なリスクを見逃す可能性が出てきます。したがって、企業規模や取引内容に応じた適正な範囲でのデューデリジェンスを確実に行うことが求められます。

② 調査対象項目の優先順位づけ

デューデリジェンスは通常、限られた期間内で行われるため、調査対象に優先順位をつけることが重要です。短期間で質を維持するためには、最も重要なリスクや課題を優先的に調査する計画を立て、チーム全体のリソースを効果的に配分する必要があります。

③ 売り手側企業の積極的な情報提供

売り手の協力的な姿勢は、中小企業M&Aでデューデリジェンスを円滑に進めるために不可欠です。リスクを隠さず伝えることで、買い手との信頼関係を築き、取引の成功につなげることができます。透明性のある情報開示は、後々のトラブルやリスクを防ぎ、最悪の場合のM&A破談を回避するためにも重要です。積極的な情報提供が、双方にとって良好な関係を維持する鍵となります。

7. まとめ

デューデリジェンスは、M&Aの成功を左右する重要なプロセスです。特に中小企業においては、限られたリソースの中で効果的な調査を行うことが求められます。適切なタイミングで、専門家の力を借りながら進めることで、リスクを最小限に抑え、成功確率を高めることができるでしょう。

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