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M&Aにおける法務リスクと対策について専門家が解説

M&A(企業の合併・買収)は、企業成長のための重要な手段の一つですが、実行には様々な法務リスクが伴います。この記事では、M&Aにおける法務リスクの種類とその対策について、専門的な視点から解説します。

なお、M&Aにおける各種契約の一覧や概要についてはこちらの記事で解説していますので、気になる方はご覧ください。

 

1.M&Aにおける法務的観点の重要性

M&Aでは、対象企業の資産や負債を評価したうえで事業の継承が行われますが、法的側面が十分に確認されていない場合、後に多額の損失を被るリスクがあります。特に、中小企業のM&Aでは法務リスクが多岐にわたるため、適切な法務デューデリジェンスや契約の精査が不可欠です。次項より、M&Aにおける具体的な法務論点について詳しく説明します。

 

2.M&Aにおける法務的な論点:対象会社の株式

株式関連の法務リスクは、対象企業の株式所有構造や株券の発行状況に関する問題です。以下のポイントを確認する必要があります。

 

①株式の帰属

  • 現状から過去に至る株主名簿や移転時の書面を確認します。
  • 中小企業の場合、株主名簿が整備されていないことも多いため、会社創立時から現在に至るまでの株式の権利の流れを逐一確認する必要があります。

 

②株券発行状況

  • 会社法上、株式会社は「株券発行会社」と「株券不発行会社」に分かれます。
  • 株券発行会社の場合は、その所在を確認する必要があります。

 

③株券の所在

  • 株式が実際に発行されているか、または紛失していないかを確認します。
  • 株券発行会社において株券の一部が紛失していると、株式譲渡の実行が有効に行えない可能性があります。
  • 第三者が保有していた場合には、その第三者から株主としての権利を主張されるリスクが残ります。

 

3.M&Aにおける法務的な論点:労務関連

中小企業は労務管理が不十分なことが多く、以下の点をデューデリジェンスで確認する必要があります。

 

①労働法令遵守状況

  • 労働基準法や社会保険法等の法令を遵守しているかを確認します。
  • 適切な労働協定(例: 36協定)が結ばれているかを確認します。

 

②労働時間管理の適切性

  • 労働時間が適切に管理され、時間外労働や休暇の規定や実態が法律に準拠しているかを確認します。

 

③未払賃金や退職金等の簿外債務

  • 従業員の労働時間の管理が適切であるか、従業員に未払賃金がないかを確認します。
  • 特に未払賃金は簿外債務として最終的な価格に影響するため、正確に確認する必要があります。
  • 退職金その他簿外債務として存在しているものがないか、正確に把握する必要があります。

 

④その他労務関連論点

  • 外注先の実態確認
  • 外国籍労働者を抱えている場合はビザの有効性確認
  • 労災や事故の発生有無の確認 等

 

4.M&Aにおける法務的な論点:不動産

対象企業が所有または賃借している不動産の権利関係や法的リスクも、M&Aにおいて重要な確認事項です。

 

①不動産の所有権確認

  • 所有権に問題がないかを確認します。

 

②賃貸借契約の確認

  • 賃貸借契約の条件や更新の可否、賃料の適正性を確認する必要があります。
  • 株主や経営者変更時のオーナー許可取得の有無について確認します。

 

③土地利用規制

  • 土地の用途規制や将来的な開発制限について確認し、事業継続に支障がないかを確認する必要があります。

 

5.M&Aにおける法務的な論点:知的財産権

知的財産権は、企業の価値を大きく左右する要素です。特に以下の点に注意が必要です。

 

①商標・特許の適切な保護と侵害リスク

  • 商標や特許の権利が適切に保護されているか、侵害リスクがないかを確認します。

 

②ライセンス契約の期限、条件、適法性

  • ライセンス契約の期限や条件、契約の適法性を確認し、知的財産権の移転に支障がないかを確認します。

 

6.買い手の法務リスク対策

買い手側としては、法務リスクを軽減するために以下の対策が有効です。

 

①包括的なデューデリジェンスの実施

  • 法務、財務、税務、労務にわたる包括的なDDを実施し、潜在的リスクを洗い出す。
  • 専門家チームを組成し、各分野のエキスパートによる精査を行う。
  • DDの結果に基づき、リスクの重要度を評価し、対応策を検討する。

 

②表明保証条項の活用

  • 売り手が提供する情報の正確性について、契約書に表明保証条項を盛り込む。
  • 重要な事項(財務状況、法令遵守、訴訟の有無等)について、契約書上で売り手に保証させる。
  • 表明保証違反が発覚した場合の補償条項も併せて設定しておく。

 

③補償条項の設定

  • 買収後に発生する可能性のある損害に対する補償条項を契約に組み込む。
  • 特定のリスク(税務、環境、知的財産等)に対する個別の補償条項を設ける。
  • 補償期間や上限額を明確に定め、予期せぬ損失を被るリスクを最小限に抑える。

 

7.売り手の法務リスク対策

売り手側としては、M&Aプロセスでの法務リスクを最小限にするため、次のような対策が必要です。

 

①事前の法務コンプライアンス強化

  • 売却前に労務、知的財産、不動産等の法的問題を事前に解決しておく。
  • 社内の法務体制を見直し、必要に応じて外部専門家の助言を得る。
  • コンプライアンス違反のリスクがある事項を特定し、是正措置を講じる。

 

②財務報告の透明性確保

  • 簿外債務や未払い賃金等、買い手が懸念する可能性のある問題を事前に明らかにしておく。
  • 財務諸表の正確性を確保し、必要に応じて第三者機関による監査を受ける。
  • 財務情報の開示方針を明確にし、買い手との信頼関係を構築する。

 

③表明保証の範囲や期間の明確な限定

  • 売り手のリスクを軽減するために、表明保証の範囲や期間を明確に限定する。
  • 知り得た範囲での表明保証に限定する等、合理的な範囲で責任を限定する。

 

8.まとめ

M&Aにおける法務リスクは多岐にわたり、適切なデューデリジェンスが成功の鍵となります。法的側面のリスクを軽減するために、専門家の助言を活用し、適切な対策を講じることが重要です。買い手、売り手双方が透明性を確保し、信頼に基づいた交渉を行うことで、M&Aを成功に導くことが出来ます。

 

9.M&Aの相談先

事業承継に課題を抱える経営者の方は、ぜひ一度、Icon Capitalへご相談下さい。Icon Capitalは、経験豊富なアドバイザーが、従業員承継を前提とした投資やM&Aに対して助言を行う会社です。

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