株式報酬や譲渡により、会社の従業員に株式を付与するケースが上場企業を中心に近年増えてきています。今回は、従業員が株式を保有することで期待される効果と注意点について解説いたします。
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東京証券取引所が取りまとめる「コーポレートガバナンスコード」(2015年6月~)において、企業の中長期的な企業価値の向上のため、経営陣に対して、自社株によるインセンティブ報酬取り入れた役員報酬制度を整備することが求められてきました。結果、2023年10月31日時点では、全上場企業の約6割が役員向けの株式報酬制度を導入するに至っています*。日本では経営者が自社株を持っていないという状況は改善されつつあります。
それに伴い、上場企業を中心に、従業員持株会等会社の従業員が会社の株式を保有することを求めるケースも増えてきています。一方、未上場企業においても、スタートアップを中心に、直接的な株式でないものの、新株予約権/ストックオプションの付与が普及しています。
*一般社団法人 日本経済団体連合会 役員・従業員へのインセンティブ報酬制度の活用拡大に向けた提言
https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/002_honbun.html
従業員が株式を保有することによって会社には以下の様な効果が期待できます。
企業にとってはキャッシュアウトすることなく、上記の様な効果が期待出来るため、上場企業を中心に従業員持株制度の導入を検討する企業が増加傾向にあります。
一方、従業員にとっても以下の様なメリットがあります。
サイボウズは、1997年設立のチームワークを支援するソフトウェアを開発・販売する会社です。プロダクトとしては、kintoneが有名です。
参考:https://topics.cybozu.co.jp/news/2022/06/30-18196.html
サイボウズは以下を目的に、報奨金100%の導入を決定しました。2021年の加入率は90%です。
一時、海外では、株価に連動した現金報酬であるファンクトムの導入をしたのですが、株式の方がオーナシップを持てる、会社のキャッシュアウトリスクがあるということで、現在は従業員が株式を積極的に保有出来る形をグループで展開しています。
日本レーザーは、創業1968年の、レーザー専門商社です。世界のトップメーカーのレーザーやカッティングエッジ技術を実現したレーザー機器、最先端の光技術とその製品の輸出入を行っています。
日本レーザーは以下を目的に、従業員と経営陣により親会社より株式を取得しました。
近藤氏は以下のように語っています。
「会社が独立するときによく使われるMBO(経営陣による買収)という手段も考えました。私が自社株を買い取って経営権を確保することはできますが、それでは経営陣だけが独立に携わることになり、本来の目標である全社一丸となった独立は望めません。そこで取引銀行の担当者が提案してくれた MEBO にたどり着いたのです」
日本レーザーは、従業員が株を持つ仕組の導入だけでなく、もう一つの特徴としては、「社員満足が第一」という経営の原則を掲げているため、明確なビジョンによって優秀な人材が集まる会社になっています。
結果として、日本レーザーは従業員が多くの株式を保有することになり、9年目の時点で離職者はほぼゼロ、無借金経営を実現しています。
参考:http://info.japanlaser.co.jp/wp-content/uploads/pdf/1663.pdf
従業員が株式を保有する良い面を中心に解説をしてきましたが、以下注意点を解説いたします。
まず、従業員に株式を付与する際の整理を、様々な法律や規制の観点から問題ないのか専門家を交えてクリアにする必要があります。
また、同時に以下の様な点も留意しておく必要があるでしょう。
従業員が株式を保有することで、株主や経営者に近い視点をもち、会社や仕事に対するオーナシップを高める効果が期待できます。一方、付与方法によっては、経営権の安定性、各種法律や規制への抵触等は考慮する必要があるので、専門家を交えて検討されることを推奨いたします。
Icon Capitalは、事業承継問題の解決のため、従業員承継型の投資を行っております。旧オーナーよりIcon Capitalが株式を取得後、従業員に段階的に付与してゆくことで、最終的にその会社は従業員の所有となる形を目指しています。
従業員が株式を保有することで、働くことに対するオーナシップをもち、意義を感じる会社を創出することで、会社の成長つなげていきます。ご質問やお問合せがございましたら、弊社までお気軽にご連絡下さい。
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