経営者が引退する場合、一般的に思い浮かぶのが親族への事業承継ですが、近年の後継者不在問題で、親族の中に後継者がおらず、やむなく廃業を選択される経営者が増加しています。本記事では、廃業の手続きや手順について解説します。
なお、廃業の基礎や概要について以下の記事でも解説しておりますので、廃業について知りたい方は是非ご覧下さい。
目次 / contents
再建を目指さず、廃業を行う場合、以下の手続きの選択肢があります。なお、私的整理については法的な制約はなく、明確なルールは決まっていないため、本記事での解説は割愛します。
廃業の手続きのうち、私的整理以外の4つの場合における手順と手続き方法についてそれぞれ解説します。
ここでは、「自主廃業・通常清算」に関する手続きの流れを解説します。基本的には、次のような流れになるため覚えておきましょう。
清算を行う場合、株主総会で解散の決議が必要になります。その際、「特別決議」が必要になります。特別決議の条件には、「株主総会に株主の半数以上が出席している」「出席した株主のうち、3分の2以上の賛成がある」の2つを満たす必要があります。
清算を行う際には、清算人を決める必要があります。もし、清算人がいない場合には、代表取締役が選定されます。清算人の選定は「株主総会での決議」または「企業であらかじめ決められている」ケースがあります。清算人が決まった後は、法務局で清算人登記を実施しましょう。
清算人決定後は、債務の届け出が必要です。公告を出し、債権者に告知を行いましょう。また、債権者に対して、個別に告知を行うことも求められます。
債務整理を行うために、「財産目録」と「貸借対照表」の作成を行いましょう。財産目録と貸借対照表を作成した後は、株主総会で承認を受ける必要があります。財産目録の記載内容に関しては、「現金」「預貯金」「貸付金」「売掛金」「有価証券」「不動産」「借入金」「買掛金」の8つがあります。
弁済に使用する資金を得るために、残余財産の換価と債権の回収を行いましょう。企業に残された資産をお金に変えることで、債務や借金の返済に使用します。たとえば、不動産や有価証券等を売却し、資金に変えられるでしょう。注意点は、安く売却してしまうと、債務の弁済に使う資金が足りなくなることです。弁済に必要な金額を考えながら、資金を作る必要があります。
資産を資金に換えたら、債務の弁済を行いましょう。弁済に必要な資金を所持している場合、弁済を行います。しかし、弁済に必要な資金が足りない場合は、通常清算が実施できないため注意しましょう。なぜなら、すべての弁済が行えない状態で弁済を進めることは、不公平になってしまうからです。もし、通常清算が行えないと判断された場合、「特別清算」または「破産」になるため注意しましょう。
弁済終了後、資金が残るケースもあります。その場合、株主に資金を分配しましょう。注意点は、税金の支払いも行う必要がある点です。税金を支払い、それでも残った資金があれば、株主に分配します。
残余財産の分配が終われば、決算報告を行います。株主総会で報告しましょう。決算報告書を作成し、株主総会で承認を得ます。承認が得られたら、法人格が消滅します。
清算が終われば、登記が必要です。決算報告の承認後、2週間以内に登記申請を実施しましょう。登記申請が完了すれば、通常清算の手続きは終了になります。
廃業するために、破産を選択するケースもあります。破産の場合は、次のような流れで実施されます。
以下にてそれぞれの手順について細かく説明します。
破産を決定する前に、まずは専門家に相談しましょう。弁護士等に相談を行うことで、どのような方向性で進めるか決められます。その結果、破産を選択した場合には、破産手続きを実施しましょう。
破産手続きを開始する場合、裁判所に申請が必要です。破産の申立書、書類等を提出しましょう。また、破産手続きを行うためには、裁判所に予納金を納める必要があります。予納金の内訳には、「手数料」「官報公告費」「引継予納金」等があるため、覚えておきましょう。
破産手続きが終われば、債務者審尋が実施されます。債務者審尋とは、債権者と裁判所が面談を行い、支払いできない状態かどうかを判断する手続きのことです。債務者審尋では、「事業内容」「破産手続きに至った経緯」「負債額」「財務状況」「債権者の人数」等の内容を聞かれるケースが一般的になります。
裁判所が破産手続きを進めても問題ないと認めた場合、破産手続きが進められます。その後、破産管財人が選ばれ、手続きを進めることになります。経営者は代理人と一緒に、破産管財人と破産に関する相談を行いましょう。
債権者集会を開き、債権者に対して説明を行います。債権者集会とは、裁判所が決めた日程で開催され、破産管財人から説明が行われる会です。具体的には、「破産に至った経緯」「財産や資産の状況」「負債の状況」「資産の換価状況」「今後の手続きに関して」等の内容が、債権者集会で説明されます。
債権者集会後は、債権の確定と配当が行われます。まずは、債権者が債権届け出を行うため、企業の負債を確定させましょう。もし、弁済後に資金が残っていた場合には、債権者に分配が行われます。
債権の確定と配当が行われることで、破産手続きは終了になります。裁判所から、破産手続終結決定が出された時点で終了です。破産手続きが終われば、企業の法人格が消滅し、負債も消滅します。
債務超過の企業では、特別清算の後に廃業を行うケースもあります。特別清算を行う場合、和解型と協定型とがあります。基本的には次のような流れで実施します。
以下にて、それぞれの手順について細かく説明します。
廃業を検討している段階で、まずは専門家に相談しましょう。特別清算だけではなく、ほかの手続き方法も選択肢に挙がるためです。
特別清算を行うと決まれば、株主総会で解散決議を実施します。この場合の株主総会では、「株主の過半数が出席している」「参加している株主の3分の2以上が賛成している」の2つを満たすことで、解散決議が実施できます。
解散決議と同時に、清算人も決めておきましょう。基本的には、代表取締役が清算人に選任されます。また、弁護士等のように、別の清算人を決めるケースもあるため覚えておきましょう。
解散が決まれば、登記が必要になります。解散から2週間以内に、解散と清算人に関する登記を実施しましょう。
清算を行うために、財産目録の作成が必要です。加えて、貸借対照表の作成も行いましょう。財産目録と貸借対照表が作成できたら、株式総会での承認を受けます。
特別清算では、債権者に対し、債権を申し出ることを通知すると決められています。まず、官報に債権の申し出を公告しましょう。企業が把握している債権者に関しては、個別に通知を行う必要があります。官報での公告と、個別の通知は両方実施しましょう。
特別清算の実施に向けて、申し立てを行いましょう。自社の本店を管轄している所在地の、地方裁判所に申請します。裁判所は申し立てを受け、「債務超過の可能性がある」または「清算を行うことが難しい状況である」と判断した場合、特別清算の実施を命じます。しかし、「清算決了の見込みがない」「債権者の利益に反する」「特別清算の申し立て理由が不適当」「費用の予納がされていない」等のケースでは、特別清算が認められない可能性もあります。
特別清算が命じられた場合、清算業務を行います。また、債権者集会を行い、債権者に対して報告も行いましょう。債権者に対しては、「会社の財産状況」「財産目録の報告」「今後の方針」等を説明します。
特別清算では、債権者に対して、「協定案」または「和解案」を作成します。まず、協定案の場合は、債権者に対する支払い計画をまとめた書類を、裁判所に提出しましょう。また、債権者に関しても、協定案の送付を行って下さい。
和解案の場合には、債権者と個別に話し合い、対応を行います。和解案を裁判所に提出して、和解の許可をもらいましょう。
協定案提出後は、債権者による決議が必要です。債権者集会を開催し、決議を行いましょう。協定案の決議には、「出席した議決権者の過半数」かつ、「議決権者の総数のうち、3分の2以上の同意」があれば認められます。もし、議決が認められない場合には、破産手続きに移行するため覚えておきましょう。また、和解案を提出し、和解が成立している場合は、協定案の決議は不要です。
協定案、和解案ともに、決められた内容を実施しましょう。協定案の場合は、裁判所の許可をもらい、弁済を進めます。和解案に関しては、個別で決めた内容をもとに、弁済を行いましょう。
特別清算が終われば、裁判所が特別清算終結の決定を出します。この際、裁判所で官報公告を行いましょう。公告日の翌日から2週間以内に不服申し立てが行われなければ、特別清算が終結します。その後、特別清算終結に関する登記を行うことで、会社が消滅し、廃業が実行されます。
経営者が経営者保証を行っている場合、経営者保証ガイドラインに沿い、経営者保証債務の整理を行うケースがあります。経営者自身の破産を免れる可能性のある制度であり、専門家への相談を行って下さい。基本的には次のような流れで進められます。
それぞれの手順について細かく解説します。
廃業を行う場合、まずは専門家に相談を行いましょう。
経営者保証債務の整理を活用する場合、返済猶予の要請を実施します。債権者に対して、一斉に通告を行いましょう。
債権者に対して弁済を行うために、弁済計画を作成します。「財政状況」「資産換価」「資産の処分」等に関して、計画を立てましょう。弁済計画を立てる際も、専門家に相談して進めることで、安心して作成ができます。
弁済計画作成後は、金融機関に弁済計画を提出します。金融機関が、弁済計画をもとに対応を検討します。弁済計画の同意を得た場合、計画に基づき、弁済を進めます。
近年の後継者不足に伴い、廃業という言葉はよく耳にされることかと想像します。廃業には一部メリットもありますが、従業員や取引先等の関係者への影響が大きく、また自社が積み重ねてきた資産を手放す行為でもあります。そのため、フラットな目線で自社の事業を見つめ直し、事業継続の可能性を最大限吟味した上での慎重な意思決定が求められます。中小企業の経営者は、専門家のアドバイスも活用しながら、最適な事業方針を選択することが重要です。
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