M&Aの成功は、買収後の経営統合プロセス（PMI）にかかっていると言っても過言ではありません。その中でも、クロージング直後から100日間に実施する「100日プラン」は特に重要とされています。本記事では、100日プランの概要や進め方、注意点について詳しく解説します。

なお、PMIの概要と重要性についてはこちらの記事で解説しておりますので、是非ご一読下さい。

１．M&Aの100日プランとは

100日プランとは、M&A成約直後から100日間に行う経営統合作業の計画やスケジュールのことです。この期間中に、PMIを推進するための体制づくりや現状分析、課題の把握、そして具体的な経営統合作業を集中的に実施します。

なぜ「100日」なのか

100日という期間が重視される理由として、以下の3つが挙げられます。

1. マネジメントの観点から、初めの四半期（約3ヶ月）で結果を出すことが重要とされているため。
2. M&A後に時間が経ちすぎると、従業員が不安や不信感を抱く可能性があるため。
3. 企業経営者にとって、経営統合の方針を明確にし、その後の手続きを判断するための適切な期間であるため。

２．100日プランの進め方

①チームと担当者の選定

100日プランを効果的に実行するためには、適切なチーム編成が不可欠です。以下の点に注意してチームを構成しましょう。

• 買収側と被買収側の両方から人材を選出する
• プロジェクトマネジメントの経験者を含める
• 各部門（財務、人事、IT、営業等）の代表者を選出する
• 全体を統括する責任者を設置する

チーム編成後は、各メンバーの役割と責任を明確にし、定期的なミーティングの開催等、コミュニケーション体制を整えることが重要です。また、必要に応じて外部の専門家を活用してチームを編成することを検討しても良いでしょう。

②現状分析と課題の明確化

チーム編成後は、両社の現状を詳細に分析し、統合に向けた課題を明確化します。デューデリジェンスで得られた情報は現状分析や今後の課題発見の参考になるため、有効的に活用すると良いでしょう。分析結果をもとに、優先的に取り組むべき課題を特定し、具体的な目標を設定します。

③計画の実行

現状分析と課題の明確化が完了したら、具体的な行動計画を立て、実行に移します。

• 詳細なスケジュールの作成（日単位での計画が望ましい）
• 各タスクの担当者と期限の設定
• マイルストーンの設定

計画実行中は、定期的な進捗確認と問題点の早期発見・解決に努めることが重要です。また、計画には短期的に成果を上げることが出来る「クイック・ヒット施策」を盛り込むことも推奨されます。従業員の処遇改善、新たな機器の購入等、即効性のある施策を行うと、従業員がM&Aのメリットを実感でき、モチベーションの向上が期待出来ます。

④効果検証

100日間の終了時点で、計画の実行結果を検証します。

• 設定した目標の達成度合いの確認
• 予期せぬ問題点や課題の洗い出し
• 成功事例と失敗事例の分析

効果検証の結果を経営陣含めたチーム全体でレビューするとともに、再度方針を練り直し、今後の統合プロセスに活かしていきます。

３．プラン策定のポイント

①クロージング前の早い段階からプランを策定する

100日プランは、M&Aのクロージング直後から開始されるため、クロージング前の早い段階からプランの策定を始めることが重要です。これにより、以下のメリットが得られます。

• 十分な準備時間の確保
• クロージング後のスムーズな統合開始
• 予期せぬ問題への対応時間の確保

②目的、目標を明確にする

100日プランの策定にあたっては、その目的と具体的な目標を明確にすることが重要です。

• M&Aの戦略的意図の再確認
• 短期的・中長期的な目標の設定
• 具体的かつ測定可能な指標（KPI）の設定

③現場で働くスタッフをチームに入れる

100日プランの策定と実行には、現場で実際に働くスタッフを積極的に巻き込むことが重要です。

• 現場の実情に即した計画立案
• 従業員の不安軽減と協力体制の構築
• 潜在的な問題点の早期発見

現場スタッフの意見を取り入れることで、より実効性の高いプランを策定することが出来ると考えられます。

④専門家への相談

M&Aの経験が豊富な専門家にアドバイスを求めることで、より効果的な100日プランを策定することが出来ます。

• 法務・財務・人事等の各分野の専門家の意見聴取
• 過去の成功事例・失敗事例の分析

専門家の知見を活用することで、見落としがちな重要ポイントを押さえ、リスクを最小限に抑えたプランを策定出来ます。

４．まとめ

100日プランは、M&A成功の鍵を握る重要な取り組みです。明確な目的を持ち、優先順位を付けた統合作業を計画的に進めることで、M&Aによるシナジー効果を最大化し、円滑な経営統合を実現することが出来ます。専門家のサポートを受けながら、自社の状況に合わせた効果的な100日プランを策定し、実行することが、M&A後の企業成長につながる重要なステップとなるでしょう。

５．M&Aの相談先

事業承継に課題を抱える経営者の方は、ぜひ一度、Icon Capitalへご相談下さい。Icon Capitalは、経験豊富なアドバイザーが、従業員承継を前提とした投資やM&Aに対して助言を行う会社です。

無料相談は随時受け付けていますので、お気軽に電話またはメールでお問い合わせ下さい。